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高齢者インフルエンザワクチン

インフルエンザウイルスとワクチン

インフルエンザウイルスは発見された順にA型・B型・C型の3つに大別されます。A型とB型の表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニターゼ(NA)の2種類のタンパク質があります。

・A 型:高熱や咽頭痛など典型的なインフルエンザ症状がでます。ウイルスの突然変異が起こりやすく,HAが16種類(H1〜H16),NAが9種類(N1〜N9)と多くの亜種があります。時に世界的に大流行し、2009年に新型インフルエンザとして流行したのもA型です(H1N1 pdm09)。

・B 型:微熱 → 腹痛・下痢といった経過をとります。ウイルスが変異しにくいため、ワクチンによる予防が可能ですが、軽い症状から感染防御が甘くなり、限られた地域で流行することがあります。「山形系統」と「ビクトリア系統」の2種類がありますが、これらは遺伝子の構造が異なるため同じシーズンに2回B型にかかることがあります。

・C 型:微熱・鼻汁程度の軽い症状でほとんどが小児期に感染します。ウイルス特性が違うため、インフルエンザには含めないこともあります。

 

インフルエンザワクチンは、毒性をなくしたウイルスを使用した「不活化ワクチン」で、毎年その年の流行を予測して製造されます。

2023/24シーズンのワクチンはA型2種類(H1N1・H3N2)とB型2種類(山形系統・ビクトリア系統)が入った4価ワクチンになります。

個人差はありますが、抗体の効果が出るまでに2週間程度かかり、接種から1ヶ月後くらいにピークになり、3ヶ月後くらいから徐々に低くなって、5か月後くらいでなくなるとされています。

 

ワクチンの効果

健常者に対する有効性

インフルエンザワクチンの健常成人への接種は、ワクチン株と流行株が一致した場合

・70-90%の発症予防

・欠勤の減少や医療費の減少などの経済効果

をもたらすとされています(JAMA 2000; 284: 1655-1663 / N Engl J Med 1995; 333: 889-893)。

 

また、コクランレビューでのインフルエンザワクチンの健常者に対するNNV (number needed to vaccine)は

  インフルエンザ様疾患の抑制

インフルエンザの抑制

(検査での診断確定)

小児 12 5
成人 29 71
65歳以上 42 30
であり、感染予防の観点からは小児>65歳以上>成人の順で効果が高いようです。日本では65歳以上がインフルエンザワクチンの定期接種の対象となっています。
 

合併症・重症化の抑制効果

インフルエンザワクチンは、合併症や重症化を抑制する効果が報告されています。肺炎で入院した患者の調査では、インフルエンザ関連肺炎はワクチン接種によってリスクを抑制できることが示唆されました(JAMA 2015; 314: 1488-1497)。

インフルエンザの合併症・重症化の危険因子としては以下があり、これらに該当する方は是非ワクチン接種をご検討ください。

・5歳未満(特に2歳未満)

・65歳以上

・妊婦

・慢性心疾患

・喘息,COPD

・慢性腎疾患(透析)

・代謝性疾患(糖尿病)

・慢性肝疾患(肝硬変)

・免疫抑制状態(HIV)

・病的肥満(BMI ≥40)

・血液疾患(鎌状赤血球症)

・長期喫煙歴

・小児の長期アスピリン治療(Reye症候群の可能性)

 

心血管疾患の抑制効果

ちょっと想像しづらいと思いますが、インフルエンザは心血管疾患のリスクの一つとされており、ワクチン接種によって心血管イベントを抑制できることが知られています。

心筋梗塞や狭心症に代表される心血管疾患は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙などの動脈硬化に関連する危険因子がよく知られています。一方で、気道感染症の原因となるインフルエンザやインフルエンザ様感染が、非古典的な危険因子としてアテローム血栓性イベントと関連することが複数の疫学試験で示唆されています。

心血管疾患リスクの高い患者に対してインフルエンザワクチンの効果を調べた6つの無作為化比較試験をまとめたメタ解析では(ワクチン群3373名、プラセボ群3362名の合計6735名)、ワクチン接種によって1年以内の心血管イベントの発症リスクが36%低下しました(JAMA 2013; 310: 1711-1720)。特に1年以内に急性冠症候群を起こした既往のある患者においては、発症リスクが55%も低下しました。

心筋梗塞や狭心症など起こしたことのある方は、冠動脈疾患の再発を予防するためにも毎年の予防接種が望ましく、ガイドラインでも推奨されています(ClassⅠ, LevelB / 急性冠症候群ガイドライン2018年改訂版)。

 

 定期接種

インフルエンザワクチンは発症予防効果が高まる65歳以上での接種が推奨されています。

対象者は

① 65歳以上の方

② 60歳以上65歳未満の方で、心臓・腎臓・呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障がいを有する者(身体障害者手帳1級程度)

対象者は補助を受けられ、自己負担額2,500円でインフルエンザワクチンを接種できます(板橋区民以外は別途ご確認ください)。なお、生活保護受給者や中国在留邦人等支援給付受給対象者は無料となります。

インフルエンザワクチンは、接種から効果が出るまでに約2週間くらいかかります。ワクチンの効果は4〜5ヶ月程度とされており、インフルエンザの流行時期(12月上旬〜3月下旬)を勘案して10月〜11月の接種が勧められています。しかし、2020年〜2022年は新型コロナウイルスに対する感染防御のためインフルエンザはほとんど流行せず、2023年5月感染症法で2類相当 → 5類になった後の8月〜9月はインフルエンザが大流行するなど、従来の流行時期が崩れてワクチン接種のタイミングが難しくなっています。

 

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