便に血が混じる、血だらけの便をした
腸管から出血した場合、出血源から肛門までの距離によって便にみられる血の具合が変化します。
① 便の表面に赤い血が付いている
肛門に近い部位からの少量の出血を示唆します。
ほとんどの場合は痔核が原因で、出血源が直腸より奥であることはあまりありません。
② 黒い便
血液は体外では酸化されて黒くなるため、黒い便は肛門からある程度離れた部位からの出血を示唆します。
胃や十二指腸からの出血ではイカ墨のような真っ黒な便になることが多いです。
また貧血の治療として鉄剤を内服している場合も、黒色便になります。
③ 真っ赤な下痢(下血)
出血源から肛門までの距離にかかわらず、胃からの出血であったとしても、大量に出血した場合は真っ赤な下痢になります。
原因となる疾患
痔核出血
肛門や直腸の血管がうっ滞して腫れた状態のことで「イボ痔」とも呼ばれます。
便秘や長時間の座位などが痔核の原因とされています。
典型的には排便やいきみで痛みを伴った出血をきたしますが、無痛性に便に血が付着するだけのことも多いです。
大腸癌
大腸癌は大腸に発生する癌で、日本では年間15万以上が罹患し、癌の中で最も罹患者数が多いとされています(2019年のデータ)。
大腸癌は症状が出現しやすく、血便、下痢・便秘、便が細くなるなどの症状がでます。
血便や便に血が付着したことを契機に診断に至ることも多いです。
炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)
消化管に慢性的な炎症が続いて粘膜障害や潰瘍を生じ、消化管出血、下痢、発熱、体重減少などを来します。
炎症性腸疾患の原因は不明な点が多いですが、遺伝的な素因に食事などの環境因子が関与して腸内細菌や腸管免疫の異常を来して発症すると考えられています。
大腸癌のリスクになることがありますので診断やフォローアップに大腸内視鏡が行われます。
感染性腸炎
腸管出血性大腸菌や赤痢アメーバなどによる腸炎では下血を伴うことがあります。
腸管出血性大腸菌はO157が有名ですが、増殖力や毒性が強いため死者を出すような集団食中毒をしばしば引き起こします。
症状は40℃前後の高熱や激しい腹痛も伴い、重症感が強いです。
赤痢アメーバは口から体内に入り込む「糞口感染」で罹患しますので、衛生状態のよくない地域への渡航で発症するケースが多いです。
大腸憩室出血
慢性的な便秘などで腸管内圧が上昇すると、腸管壁の薄い部分が外側に袋状に突出することがあります。
これを憩室といい、ときに血管が損傷して動脈性の出血を引き起こします。
腹痛がほとんどない一方で大量の下血をきたすことが特徴で、ときに高度貧血や前ショック状態になることもあります。
受診の目安
便に血が付着したケースの多くは痔核出血ですが、大腸癌の可能性を否定できませんので一度は医療機関を受診されてよいと思われます。
大量の下血をきたして受診をためらう方は少ないと思いますが、高熱や激しい腹痛を伴う場合は腸管出血性大腸菌などの重大な腸管感染症の可能性がありますのですぐに救急車を呼びましょう。