手や手首が痛い
手や指は多数の小さな骨で構成され、関節・筋肉・腱・神経が複雑に配置されています。
それらに変形や炎症が生じると痛みや痺れとなって現れます。
足と違って手や指は体重がかかる部位ではありませんが、仕事や生活で繰り返す動作によって負荷がかかり、経年的に障害されていきます。
原因となる疾患
外傷
手の外傷は転倒する際に手をついて受傷することが多いです。
捻挫や靱帯損傷でも骨折を伴うことがあり、骨折も複数箇所に認めることもあります。
骨粗鬆症のある高齢者が手をついて転倒すると橈骨遠位端骨折などを受傷することが多いです。
関節リウマチ
関節の骨と骨が向き合う面はクッションの役割を果たす軟骨で覆われています。
さらに関節全体を「滑膜」という薄い膜で覆って保護しています。
滑膜からは関節液が分泌されていて軟骨がこすれ合う時の潤滑油になったり、軟骨へ栄養を補給していたりします。
関節リウマチでは異常な免疫反応によって滑膜に炎症・増殖が起き、関節内のbare areaと呼ばれる軟骨に覆われていない部分の骨が侵食されていきます。
関節リウマチでは手指や手首の症状が多く、進行すると手指の偏位・脱臼をおこして独特な変形を呈します。
乾癬性関節炎
皮膚疾患である「乾癬」に関節炎を合併した病気で、免疫学的な以上によって皮膚や関節に炎症が生じます。
特徴的な角質が厚くなった赤い発疹が出現した後に、指先・手首・膝・足首などに痛みを伴う腫脹が生じ、進行すると様々な変形を呈します。
関節の腫脹は紡錘状で「ソーセージ指」などと表現されます。
痛風
血中の尿酸値が高くなると尿酸とナトリウムが結晶を作ります。
この尿酸塩結晶が皮膚や関節などに沈着して炎症をおこすと強い痛みを生じます(痛風発作)。
痛風性関節炎はどの関節でもおこり、手指や手首が痛くなる方もいます。
偽痛風
痛風によく似た関節炎で、機序は不明ですがピロリン酸カルシウムが関節軟骨などに沈着して炎症を起こします。
手首など比較的大きな関節におこります。
ガングリオン
詳細な機序は不明ですが、関節包や腱鞘の一部から丸い袋が形成され、その中に関節液や滑液が溜まってゼリー状に濃縮されることにより発症します。
ガングリオンの大きさは数mm?数cmで、手首の甲側に好発します。
手首の掌側や指の付け根にできた場合は神経や腱鞘を圧迫して痛みや痺れをおこします。
腱鞘炎
骨に筋肉が付着している部分を「腱」といいますが、腱は腱鞘と呼ばれる組織に包まれています。
腱鞘炎は腱と腱鞘の間に摩擦が生じて炎症を起こしたもので、痛みやひっかかり感を感じるようになります。
手首や指を酷使することで腱と腱鞘に過剰な摩擦がはたらき、腱鞘炎を発症します。
キーボード操作やピアノ演奏など指や手首を長時間動かす作業を日常的に行っている人やスポーツ選手、育児中の人などが発症しやすいとされており、近年では長時間のスマホ操作も腱鞘炎のリスクを高めるとされています。
また、女性ホルモンのプロゲステロンは腱鞘を収縮させる作用、エストロゲンには組織を滑らかに保つ作用があり、プロゲステロンが増加する出産後やエストロゲンが減少する閉経後の女性も腱鞘炎が起こりやすくなります。
手根管症候群
手根管は手関節にある手根骨と横手根靱帯(屈筋支帯)で囲まれたトンネルで、その中を正中神経と指を動かす9本の腱が腱鞘を伴って走行しています。
この手根管が狭くなると正中神経が圧迫されて手の親指側に痺れや痛みが現れます。
上述したように出産後や閉経後の女性は手根管内の腱鞘がむくんで正中神経を圧迫して手根管症候群を発症しやすいとされています。
受診の目安
手や指の痛み・痺れは生活に支障を来すことになりますので我慢せず早めに医療機関(特に整形外科)を受診しましょう。
以下のような人は放置すると機能障害が残る可能性があるため、すぐに診てもらうようにしてください。
- 痛みや痺れが3日以上続く
- 痛みが強くて手首がまともに動かせない
- 強い外力がかかって手首を負傷した
- 見た目で強く腫れている