下痢
大腸は腸管内容物の水分を吸収して固形状の糞便を形成します。1日に腸管に入る水分は約9Lとされますが、そのうちの6-8Lが小腸で、1-2Lが大腸で吸収され、糞便は0.1L程度の水分と消化吸収されなかった食物残渣、腸内細菌、剥がれ落ちた腸管粘膜などからできています。
大腸は便をこねくり回しながら肛門へ排出していきますが、この運動はぜん動運動(伝播性収縮)と分節運動(局所性収縮)に分けられます。
そして直腸に便が入ると直腸から信号が脳へ送られて便意を感じ、排便反応がおこります。
この一連の大腸機能に異常が生じると便通異常が生じます。
蠕動運動が強くなりすぎると腸管内容物の通過時間が短くなって大腸での水分吸収が不十分になり、下痢になります。
原因となる疾患
感染性腸炎
ウイルスや細菌によって腸管に炎症が生じると腸管の分泌物が増えて下痢になります。
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルス性腸炎の頻度が高いです。
病原性大腸菌や腸管出血性大腸菌などの腸炎では激しい下痢による高度脱水や全身性の炎症反応を合併して重症化することがあります。
医療に関連した下痢
抗癌剤治療中の患者やAIDS患者、ステロイドや免疫抑制剤を使用している患者などでは免疫抑制状態が続くため真菌(カビ)による特殊な腸炎を発症することがあります。
また、抗生剤を長期使用している場合、抗菌薬によって腸内細菌叢のバランスが大きく乱されて偽膜性腸炎という難治性の下痢が生じることがあります。
食中毒
腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌などの細菌が飲食物を介して腸管に感染し、下痢を引き起こします。
血便や高熱を伴うこともあります。
特に海外旅行から帰国後に下痢症状が出現したものを旅行者下痢症といいます。
薬剤性下痢
下剤(酸化マグネシウムなど)や胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸など)を内服している人に下痢が起こることがあります。
また、抗菌薬も下痢の原因になることがあります。
受診の目安
ほとんどの下痢は原因となる微生物が排出しきれば自然寛解しますので、水分補給に注意して耐えれば数日で治癒します。
しかし、下記の症状を伴う場合は特殊なケースの可能性があるため、医療機関を受診しましょう。
- 激しすぎる水様下痢
- 水分摂取が不十分で脱水症のようになっている
- 強い腹痛を伴う
- 下痢に血液が混じっている、真っ赤な下痢をする
- 38℃以上の高熱がある