めまいがする
めまいは、目がぐるぐると回るような「回転性めまい」とフワフワ揺れるような「浮動性めまい」に大別されます。
回転性めまいは、平衡感覚を司る三半規管や前庭などの内耳の異常によることが多く、まれに、平衡感覚の情報を処理する小脳や脳幹の脳梗塞が原因となることがあります。
回転性のめまいでは、吐き気や耳鳴り、難聴を伴うことがあります。
浮動性めまいは、バランスの維持機能の低下や前失神状態などで生じます。
原因の大半が血圧の調整異常や貧血、自律神経失調症などですが、心不全や弁膜症などの重大な心疾患が合併していることもあります。
原因となる疾患
良性発作性頭位めまい症
重力を感知する前庭には「耳石」と呼ばれる小さなカルシウム結晶があります。
この耳石が何らかの原因で剥がれ落ちて三半規管に入り込んでしまうと激しい回転性めまいが出現します。
起き上がったときや振り向いたときなど、頭の位置を変えたときに世界がグルグル回るような強いめまいを感じますが、頭の位置を変えずに安静にしていれば数分以内に消失します。
耳鳴りや聴力低下は通常ありません。
メニエール病
何らかの原因で平衡感覚を司る「内耳」にリンパ液がたまることで発症します。
回転性めまいと耳鳴りが寛解と再発を繰り返し、経時的に聴力が低下していきます。
通常、片方の耳にのみ生じますが、進行するともう片方の耳にも発症するようになります。
前庭神経炎
詳しいメカニズムは不明ですがウイルス感染などにより平衡感覚の維持に関わる「前庭神経」に炎症が生じて発症します。
突然、激しい回転性めまいが出現し、1~3日間ほどで改善していきますが、その後もふらつきなどの平衡感覚異常が数か月ほど続きます。
耳鳴りや聴力低下は通常ありません。
突発性難聴
内耳にある、音の振動を電気信号に変換する有毛細胞の異常によって発症するとされていますが、詳しいメカニズムは不明です。
突然に片方の耳が聞こえなくなることが特徴で、半数程度でめまいも伴います。
片頭痛関連めまい(前庭型片頭痛)
めまいと頭痛は関連しており、緊張型頭痛でも約3割にめまいが出現しますが、片頭痛では半数以上に回転性もしくは浮動性のめまいを伴います。
片頭痛関連めまいは片頭痛とめまいが別々に生じることも多いですが、治療によって片頭痛がコントロールされるとめまいも改善します。
脳血管障害
運動の調節やバランスの維持を司る小脳や脳幹への血流(後方循環系)が低下すると強いめまいをおこすことがあります。
動脈硬化などによって血管が狭くなった場合、めまいは一過性であることが多いですが(椎骨脳底動脈循環不全),脳梗塞に進行した場合はめまいが持続するようになります。めまいを主訴に救急外来を受診した方のうち、脳梗塞患者は3-5%とされています。
脳梗塞でめまいをおこす場合は、片側の手足に力が入らなくなったり、片側の顔の動きが悪くなったり、ろれつが回らなくなったり、顔や手足の感覚がにぶくなったり、といった麻痺や感覚障害による症状を伴うことが多いです。
神経変性疾患
神経変性疾患とは脳や脊髄の神経細胞の一部が徐々に障害を受けて脱落してしまう疾患の総称です。
パーキンソン病や多発性硬化症、多系統萎縮症などでは自律神経や小脳・脳幹などの神経細胞が障害を受けてめまいを生じます。
めまいは神経変性疾患の多彩な神経症状のうちの1つですが、しばしば難治性であり、患者や医療従事者を悩ませます。
脳腫瘍
脳腫瘍の有病率は、原発性・転移性あわせて人口10万人あたり10~12人とされ、非常に稀な疾患です。
内耳や小脳・脳幹を障害する聴神経腫瘍や小脳腫瘍などでは強い回転性めまいをきたすことがあります。
脳腫瘍は発生した部位によって多彩な神経症状を生じますが、頭蓋内圧が上昇することでおこる頭痛、めまい、嘔吐が共通して認められます。
前失神状態
一時的に意識を消失し、その後完全に意識が戻ることを「失神」といい、その一歩手前の「フワッときた」「クラッとした」というような状態を「前失神」といいます。脳が意識を保つための必要な要素である、①脳皮質の正しい電気的活動、②ブドウ糖、③酸素、④ブドウ糖と酸素を脳へ届けるための血圧・血流のいずれかが障害されると失神もしくは前失神をきたします。
原因のほとんどが血圧の調整異常であり、動脈硬化が進行した状態であることが多いですが、なかには弁膜症や心筋症、不整脈といった心臓性失神の前段階のこともあります。
また、貧血や電解質異常、低血糖、低酸素状態といった全身性の異常でも前失神をきたしますのでフワフワ揺れるようなめまいであっても、一度は内科的な診察を受けた方がよいと思われます。
受診の目安
めまいの原因となる疾患には脳梗塞や心疾患が含まれるため、初めての発作や強いめまい症状であれば医療機関を受診した方が良いと思われます。
特に下記の症状を伴うめまいは重篤な疾患の可能性が否定できないため、すぐに医療機関へ受診しましょう。
- 頭痛がある
- 意識がもうろうとする
- 手足や顔が動かしづらい、呂律が回らないなど麻痺を合併している可能性がある
- 手足や身体の感覚が鈍い、痺れている
- ものが二重に見える
- 2週間以上めまいが持続している
- 血圧が高い、もしくは血圧が低い
- 息切れがある