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慢性腎臓病

慢性腎臓病とは

腎臓は腰の辺りに背骨を挟んで右左に1つずつある、握りこぶしくらいの大きさの臓器です。腎臓は血液をろ過して水分や老廃物を尿として体外へ排出しています。腎臓は尿を作る以外にも、血圧の調整、血液中の電解質(ナトリウム、カリウムなど)の調整、血液の酸性とアルカリ性の調整、赤血球を作るホルモンの分泌、骨を作るのに重要なビタミンDの活性化を行うなど多くの役割があります。

慢性腎臓病は何らかの原因によって腎臓の機能が低下した病気です。腎機能の低下もしくは腎障害の所見が3ヶ月以上続いた場合に慢性腎臓病と診断され、腎機能低下は糸球体濾過量60mL/分/1.73m²未満、腎障害の所見は蛋白尿や腎臓の形態異常などで示されます。

なぜ慢性腎臓病になるのか

腎臓は血液中の老廃物や塩分を濾過して尿を作り、体外に排出します。この血液を濾過する部分は、毛糸の玉のように丸まった微細な毛細血管であり、その形状から「糸球体」と呼ばれます。腎臓に流入した血液が糸球体を通過する過程で、余分な水分や電解質、老廃物などが濾過されて排出されます。血球や蛋白質などは濾過されずにきれいな血液とともに腎臓から身体に戻されます。糸球体で作られた原尿(尿の素)は尿細管で必要な物質が段階的に再吸収され、濃縮されていき、最終的に尿として膀胱へ排出されます。糸球体から尿細管までをネフロンといい、1つの腎臓に約100万個のネフロンがあります。

慢性腎臓病の原因は多岐にわたりますが、主要なものとして糸球体内圧の上昇が挙げられます。糸球体内圧とは文字通り「糸球体にかかる圧力」のことで、血液から原尿(尿の素)を濾し出すときに必要な圧力(糸球体濾過圧)にも関係します。糸球体内圧が高い状態が続くと徐々にネフロンが障害されます。稼働しているネフロンは全体の10%程度とされており、腎臓はかなり余力を持って機能していますが、糸球体内圧の上昇が何年も続くと腎機能が低下していきます。糸球体内圧は糸球体の前後にある細い動脈などによって規定されますが、主に加齢や高血圧・糖尿病といった生活習慣病、喫煙などによる細動脈の硬化がおこると糸球体内圧が上昇します。

糸球体内圧の上昇だけでなく、炎症や薬剤などによる腎臓の間質が障害されたり、遺伝的な構造・機能異常が影響したりすると慢性腎臓病を発症します。

放置するとどうなってしまうのか

慢性腎臓病が進行して低下してしまった腎機能は、回復することはほとんどなく、最終的に透析などの腎代替療法が必要となる末期腎不全になります。上述したとおり、腎臓はかなり余力を持って機能していますので、糸球体内圧の上昇などが起きても腎機能は低下していないことが多いです。逆に言うと慢性腎臓病と診断されたということは腎臓の余力が相当失われている状態であり、10年後には透析が必要な状態になっている可能性がある「透析予備軍」であるといってよいでしょう。

腎臓が悪くなるというと、尿がでなくなって身体に水分が貯留したり毒素が蓄積したりして不調をきたす「尿毒症」をイメージしやすいですが、尿毒症は進行しきった末期腎不全でしか出現しません。慢性腎臓病は自覚症状が少ないため、気づかないまま進行してしまうケースが多いです。

腎機能が低下すると、造血ホルモンの分泌低下による腎性貧血やビタミンD活性化の低下による骨粗鬆症を合併することがあります。他にも慢性腎臓病は代謝異常や免疫機能低下、血管内皮細胞の異常などが起こりやすいとされ、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントや悪性腫瘍、認知症といった様々な疾患のリスクを上げると報告されています。さらに感染症に罹患したときの重症化リスクを上げたり、老化現象を促進させたりと、慢性腎臓病は万病の元といってもいいくらい健康に害をもたらします。

どうすればいいのか

前述したとおり、慢性腎臓病は診断された時点で腎臓の余力はあまりなく、腎機能が大幅に回復するもありません。なので現時点で無事に残されたネフロンを大事にしながら生きていくことが重要です。

一般的にイメージできる不健康・不健全なことは全て腎臓にとって悪いものと思ってください。食べ過ぎ、飲み過ぎ、タバコ、運動不足、睡眠不足、夜更かしや不規則な生活、職場・家庭での疲労や精神的ストレス、歯を磨かない、高カフェインのエナジードリンク、パンチの効いた味の食べ物・・・、些細な悪癖を列挙したらキリがありませんが、これらは全て健気に頑張っているネフロンをいじめ、慢性腎臓病を進行させるものです。酒タバコを断ち、早寝早起きで習慣的に運動し、粗食に徹する・・・、「そんな生き方して何が楽しいんだ」と思われる方もいるでしょう。しかし弱った腎臓とともに生きて行くには、多少なりともネフロンの視点になって生活を健康・健全なものに変えていくことが必要なのです。

そのうえで慢性腎臓病の直接的な原因となっている疾患の治療を受けましょう。疾患によっては早期に介入することで腎機能が回復することもあります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病は慢性腎臓病の進行だけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントや悪性腫瘍、認知症といった合併症の発症にも関係するため、総合的に管理する必要があります。慢性腎臓病が進行すると食事中のカロリーや蛋白質、カリウムなどの至適条件が変わってきますので医師や栄養士の指導に従いましょう。

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