頭痛がする
脳実質には痛みを感じる組織はなく、頭の痛みは硬膜や血管、頭蓋外の組織にある頭蓋内および頭蓋外の受容器(センサー)から感覚神経を経て認識されます。
また、脳血管の壁には三叉神経が分布しており、脳の血管が拡張すると痛みを感じることがあります。
頭痛は、「頭痛そのものが疾患」となっている一次性頭痛と他の疾患に頭痛が伴った二次性頭痛にわけられます。
二次性頭痛の原因となる疾患は風邪や副鼻腔炎などから重篤な脳の疾患まで多岐にわたります。
原因となる疾患
緊張型頭痛
首や肩の凝りによって生じる頭痛で、一次性頭痛のなかでも最も多く、有病率は20%以上(5人に1人以上)とされています。
圧迫されるような、締めつけられるような非拍動性の頭痛が両側性に生じることが多いです。
片頭痛
脳血管が収縮 → 拡張しておこる一次性頭痛です。
何らかの原因で血液中のセロトニン濃度が上昇することがきっかけで発症し、三叉神経が過敏になることで頭痛が慢性化します。
脳血管が拡張していく過程でズキンズキンと脈に合わせて痛くなりますが、血管が伸びきってしまうと非拍動性の頭痛になります。
頭痛が生じる前に目の前がチカチカするような視野異常などの前兆を生じることもあります。
群発頭痛
明確な発症機序はわかっていない比較的稀な一次性頭痛です。
側頭部だけでなく、目の奥や上など目の周辺が一時的に激しく痛みます。
頭痛は15分から3時間ほどで改善していきます。
目の充血や流涙、目元のむくみを伴うこともあります。
群発頭痛は20〜40歳代の男性に生じることが多く、睡眠中に起こりやすいのが特徴です。
また、飲酒がきっかけになることがあるため、お酒は控えましょう。
脳血管障害(脳卒中)
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害は硬膜や脳血管を刺激するため強い頭痛を感じることがあります。
特にくも膜下出血は「ハンマーで殴られたような」と形容されるくらい強烈な頭痛が特徴的です。
頭部の打撲や外傷でも急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷などを受傷します。
頭痛の強さ・広さが頭を打っただけでは説明がつかないような場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
また、慢性硬膜下血腫のようにジワジワ出血するタイプのものは月単位の経過で進行することがあります。
頭を打ってから1週間以上頭痛が続く場合も早めに受診した方がよいと思われます。
帯状疱疹
水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症で、このウイルスは神経節に潜伏し、免疫力が低下すると再活性化して帯状疱疹として発症します。
三叉神経の支配領域(左右片方の側頭部〜顔面)にピリピリした痛みや知覚過敏、知覚鈍麻などを生じます。
典型的には水疱を伴った赤くただれたような皮疹が出現しますが、痛みが皮疹に数日〜1週間ほど先行することが多く、皮疹が出現しないケースもあります。
また、軽快した後も痛みだけが後遺症のように残ることもあります(帯状疱疹後神経痛)。
緑内障
緑内障はさまざまな原因で視神経が圧迫されて視野(見える範囲)が狭くなったり部分的に見えなくなったりする病気です。
原因の多くが眼圧の上昇によるものですが、膠原病によるぶどう膜炎や糖尿病などに続発することもあります。
片方の眼に視野障害が生じても、もう片方の視野で補ってしまうために進行するまで自覚できず、緊張型頭痛のような症状だけのときが多くあります。
急激に眼圧が上昇して発症する急性緑内障発作では、強い頭痛に加えて目の痛みや充血を認め、視力が急速に悪化して失明するリスクがあります。
髄膜炎
髄膜炎は脳や脊髄の表面を覆う髄膜に感染症や膠原病、悪性腫瘍などによって炎症が生じた疾患です。
典型的な症状は高熱を伴う頭痛、吐き気・嘔吐で、進行するとけいれんや意識障害をひきおこして死に至ることもあります。
特に細菌性髄膜炎は進行するスピードが速く症状も激しいですが、それ以外の髄膜炎や高齢者の髄膜炎では神経症状がほとんど現れないことも多く、症状が微熱と頭痛だけというケースもあります。
受診の目安
頭痛の多くは緊張型頭痛であり、セルフケアで対処することができます。
しかし以下の症状を伴う場合は重篤な疾患である可能性が否めないので早めに医療機関を受診しましょう。
- 今まで経験したことがないくらい激しい頭痛
- 高熱を伴う
- ボーッとする、意識がなくなる
- 麻痺を合併している
- 目がみえづらくなった
- 認知症のようなおかしな言動