膝の痛み
膝には骨や筋肉、靭帯、半月板、軟骨などさまざまな構造物があります。
これらの構造物が障害されると炎症が起こり、痛みや動かしづらさを生じます。
原因となる疾患
変形性関節症
膝関節の軟骨がすり減って、痛みが生じる病気です。
膝関節は常に体重を支えている部位であり、高齢者では関節軟骨の経年的な摩耗は必発です。
関節の骨と骨のすき間が狭くなって内側の骨があらわになり、骨が変形して縁にトゲのような突起物を生じたりします。
関節包の内側に炎症が起こって液体貯留を来すこともあります。
外傷
膝関節には体重のほとんどが乗っているため打撲などの強い外力でなくとも、急な捻りやストップ&ゴーなどの動作でも靱帯損傷をおこします。
膝関節は大腿骨・腓骨・脛骨・膝蓋骨の4つの骨で構成されるため、骨折が複数箇所に及ぶこともあります。
関節リウマチ
関節の骨と骨が向き合う面はクッションの役割を果たす軟骨で覆われています。
さらに関節全体を「滑膜」という薄い膜で覆って保護しています。
滑膜からは関節液が分泌されていて軟骨がこすれ合う時の潤滑油になったり、軟骨へ栄養を補給していたりします。
関節リウマチでは異常な免疫反応によって滑膜に炎症・増殖が起き、関節内のbare areaと呼ばれる軟骨に覆われていない部分の骨が侵食されていきます。
関節リウマチは手指や足趾が好発部位ですが膝関節も半数以上で発症します。
乾癬性関節炎
皮膚疾患である「乾癬」に関節炎を合併した病気で、免疫学的な以上によって皮膚や関節に炎症が生じます。
特徴的な角質が厚くなった赤い発疹が出現した後に、指先・手首・膝・足首などに痛みを伴う腫脹が生じ、進行すると様々な変形を呈します。
関節の腫脹は紡錘状で「ソーセージ指」などと表現されます。
痛風
血中の尿酸値が高くなると尿酸とナトリウムが結晶を作ります。
この尿酸塩結晶が皮膚や関節などに沈着して炎症をおこすと強い痛みを生じます(痛風発作)。
痛風性関節炎は膝から下の関節で全体の9割を占めるとされていますが、初回発作が膝関節であることは比較的稀です。
発作が慢性化した場合は膝関節もみられます。
偽痛風
痛風によく似た関節炎で、機序は不明ですがピロリン酸カルシウムが関節軟骨などに沈着して炎症を起こします。
最も多いのが膝関節で全体の7割を占めます。
高熱を伴うことが多いので化膿性関節炎との鑑別が重要です。
化膿性関節炎
関節内は無菌状態ですが血流も乏しく免疫細胞が活動しづらい部位でもあるため、ひとたび病原体が入り込むと重大な感染症を起こすことがあります。
化膿性関節炎は急激な痛みや腫れが生じ、数日以内に関節破壊に至ります。
膝や足首、股関節などの下肢に発生することが多いです。
人工関節置換術を行った方やステロイド・免疫抑制薬などを内服している患者、糖尿病患者などに起こりやすいことが知られています。
受診の目安
基本的に膝の痛みで致命的な疾患はほとんどありません。
しかし、膝の痛みで活動性が下がる → 体重増加&下肢筋力低下 → 歩行時の膝の痛みが悪化という負のサイクルが生まれやすいので、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。
ただ、38℃以上の高熱を伴う膝関節の痛みは化膿性関節炎の可能性が否定できないため、速やかな受診が望ましいでしょう。