ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドロームとは、運動器の障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態をいいます。日常生活に支障はないと思っていても、ロコモティブシンドロームに該当するケースも多く、進行すると将来介護が必要になるリスクが高くなります。ロコモティブシンドロームの発症・進行を予防することは高齢者の健康寿命を延ばしていく最重要事項であり、厚生労働省が行っている「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」でもロコモティブシンドロームを国民の健康に対する課題として取り上げています。
なぜロコモティブシンドロームになるのか
ロコモティブシンドロームは移動機能が低下した状態であり、病気ではありません。運動器の疾患(主に整形外科疾患)や加齢による運動器の機能低下によってロコモティブシンドロームに至ります。
ロコモティブシンドロームの判定は日本整形外科学会が公開している「ロコモ度テスト」で行います。
ロコモ度テストは
- どれくらいの高さの台から立ち上がれるかを測る「立ち上がりテスト」
- 大股で歩いた距離を身長で割る「2ステップテスト」
- 日常生活や身体機能に関する25の質問からなる「ロコモ25」
の3つのテストで構成されています。ロコモティブシンドロームの進行度も判定でき、初期段階のロコモ度1、進行している段階のロコモ度2、社会生活に支障をきたして自立できなくなるリスクが高い段階のロコモ度3に分類されます。
放置するとどうなるのか
加齢に伴ったロコモティブシンドロームは、骨粗鬆症や骨格筋量の低下(サルコペニア)が背景にあることが多く、基本的に症状はありません。そのためロコモ度2以上になるまで放置されていることが多く、ちょっとしたことで転倒して骨盤骨折や大腿骨骨折などの脆弱性骨折を受傷し、一気に介護が必要な状態に陥ります。
2013年から2020年にかけて日本人の平均寿命は男女とも約10年延長しましたが、健康寿命は1年も延びていません。平均寿命と健康寿命のギャップが広がっている大きな要因として、ロコモティブシンドロームが放置されている状況があるのではないでしょうか。
どうすればいいのか
加齢による運動器の機能低下に対しては、運動や筋力トレーニングが有効です。激しい運動である必要はなく、ウォーキングなどの軽めのものでも十分です。「健康日本21」では目標値として男性9200歩、女性8300歩を定めていますので、それを目指して歩いてみましょう。ただし、ロコモ度が進行しているおそれがありますので、運動中に転ばないよう気をつけてください。
運動器の疾患によるロコモティブシンドロームの場合は、整形外科的な治療が必要になります。痛みを緩和したり、関節の可動域を拡げたりすることで運動しやすくなります。運動器の疾患がある場合は負担をかけすぎると逆効果になってしまうこともありますので、専門家の指導がつく運動器リハビリテーションを行ったほうがよいでしょう。