慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は、喫煙などで有害物質を長期にわたって吸い込んでしまうことで肺に炎症が起こり、うまく呼吸ができなくなる疾患です。うまく呼吸できないことを換気障害といい、COPDでは閉塞性障害といううまく息を吐き出せないタイプの換気障害が認められます。
COPDでは平地での歩行や日常動作でも息切れや息苦しさを感じるようになります。息をうまく吐き出せないのでゆっくり長く息を吐くことが特徴的です。また、呼吸をするのに常にパワーをつかうため、いくら食べても痩せてしまう人が多いです。
なぜCOPDになるのか
肺の構造は木の枝のように細かく分かれる気管支と、気管支の先端で肺胞(はいほう)と呼ばれる微小な空気袋がブドウの房状に集合してできています。タバコの煙などの有害物質を長期にわたって吸い込むことで肺胞の構造が破壊されていき、ブラやブレブといった気腔が生じます。この気腔は弾力がなく、ガス交換もできない肺のデッドスペースで、肺の気腫化が進行すると肺気腫と呼ばれる状態になります。気管支の末梢の部分は周りの組織から引っ張られることで内腔を保っていますが、スカスカの状態になった肺では気管支の内腔を保つことができず、特に息を吐くときに潰れてしまいます。これが息を吐き出せなくなる閉塞性障害のメカニズムであり、COPDは一度進行してしまうと基本的には回復しません。
COPDを放置するとどうなってしまうのか
COPDは肺機能が低下することで息切れや咳・痰がおこりますが、徐々に進行するため状態が安定していることが多いです。しかし、安定しているようであっても肺の余力はほとんどないため、風邪や気管支炎などの呼吸器感染症を契機に急速に悪化することがあります。COPDの急性増悪では換気障害が進んで体内の二酸化炭素が蓄積するため、血液が酸性に傾くことで意識障害をきたしたり、呼吸中枢が高濃度の二酸化炭素に慣れてしまって呼吸自体が弱くなってしまったりと、入院加療が必要になるケースが多く、死に至ることもあります。
どうすればいいのか
COPDの患者さんの9割以上に喫煙歴があり、タバコはCOPD発症・進行の最大の危険因子です。禁煙によって肺の機能が悪化していくことを予防でき、COPDの死亡率も低くなることが示されています。禁煙はCOPD治療の最優先事項であり、絶対です。基本的に良くならず常に辛い状態が続いているCOPD患者さんにとって1本のタバコは数少ない楽しみかもしれません。しかしそれは「悪魔の誘惑」であり、吸えば吸うほど後でもっと辛くなるのです。当院では禁煙外来を設けていますので禁煙達成のためにご利用頂ければと思います。
COPDは一度進行してしまうと良くなることはありませんので、一生付き合うつもりで治療に臨んでください。症状がなくても油断せず、毎日吸入薬を使用して風邪などひかないよう体調管理に努めましょう。インフルエンザや肺炎球菌、新型コロナウイルスなどに対する予防接種を受けることもお勧めです。