関節リウマチ
関節リウマチとは
関節リウマチは免疫の異常によって関節の内面を覆っている「滑膜」という柔らかい膜が異常に増殖し、炎症をおこすことで周囲の骨や軟骨を溶かしてしまう疾患です。滑膜の炎症が長期間続くと、関節が破壊されて変形や癒合をおこし、関節の痛みや可動制限を生じるようになります。
なぜ関節リウマチになるのか
関節リウマチは、身体の免疫機能が何らかの異常を来して関節の滑膜に対して作用し、炎症や細胞増殖を引き起こすと考えられています。その詳しい発症メカニズムは解明されていない部分が大きいですが、遺伝的要因と環境的要因が複合的に関与していると考えられています。遺伝的要因は関節リウマチの発症の10〜15%関与しているとされており、白血球の遺伝子など約100種類の遺伝子異常が報告されています。環境的要因として最も重要なものはタバコです。他にも肥満や歯周病、腸内細菌、女性ホルモンなどが関節リウマチの発症に関与しているとされています。
ヒトの骨は、破骨細胞が古くなった骨を壊して(骨吸収)、骨芽細胞が新しく骨を作ることで(骨形成)、新陳代謝を行っています。関節リウマチでは、古い骨が壊されたスペースに増殖した滑膜が入り込むことで新しい骨が形成されなくなります。これが繰り返されると骨が壊された穴が徐々に大きくなっていきますが、手指の関節など小さな骨では関節破壊の影響を強く受けます。
放置するとどうなってしまうのか
関節リウマチの自然経過にはいくつかのパターンがありますが、ほとんどの場合は改善と悪化を繰り返しながら徐々に進行していきます。
初期段階では「こわばり」という関節が思ったように動かない症状が午前中を中心に1時間以上続きます。滑膜の炎症・増殖が進むと関節の痛み・腫れが生じますが、特に手首や手指の関節におこりやすく、ほとんどの場合、1つの関節にとどまりません。この状態が長期間続くと関節の軟骨や骨が少しずつ破壊され、関節の変形や脱臼、拘縮などが生じて、関節が動かなくなっていき、日常生活に大きな支障をきたします。一度破壊された関節は元に戻ることはありません。関節リウマチは発症から最初の2年ほどで病気が進行するとされており、放置せず初期段階で治療することが大切です。
関節リウマチの炎症は関節以外の臓器に生じることがあります。特に肺の合併症が多く、全体の約15%に間質性肺炎などの肺疾患を認めます。心筋梗塞や脳梗塞のような動脈硬化性の心血管イベントの発症リスクも健常者と比べて2倍以上とされており、関節リウマチ患者の直接的な死因となります。眼に症状が出る場合は、眼球の外側を覆っている強膜に炎症がおこり、充血と痛みを伴う強膜炎を発症します。このような合併症も併せて関節リウマチの患者はそうでない人と比べて10年程度寿命が短くなると言われています。
どうすればいいのか
関節リウマチの治療は薬物療法が中心となりますが、環境的要因の管理を徹底することが非常に重要です。特にタバコは絶対にやめましょう。肥満や歯周病、腸内細菌などが関節リウマチの環境的要因として知られているので、生活習慣や食事内容を健康的なものにしていくことが望ましいです。
関節リウマチの治療薬は近年、開発が進み、一昔前と比べて関節の炎症を効果的に抑えることができるようになりました。しかし治療していく過程で、関節外合併症や薬の副作用をおこすリスクは小さくなく、薬の効果が減弱して効かなくなることも起こります。症状がよくなったからといっても油断せず、定期的な通院を続けるようにしましょう。