麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)
麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)は、麻疹(Measles)と風疹(Rubella)の弱毒化したウイルスを混ぜた生ワクチンです。麻疹も風疹も感染力が強く、発熱と発疹が出現します。麻疹の方が症状が強く、肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こすことがあります。風疹は妊娠中の女性が感染すると、赤ちゃんの目や心臓、耳に障害が残る先天性風疹症候群の原因になります。できるだけ早期の予防接種が望ましいため、1歳になったらすぐに「定期接種」を受けるよう推奨されています。
対象者
麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種対象者は、1歳以上で麻疹または風疹ににかかったことがない人です。
これまでの予防接種事業の変遷の影響で、世代によってワクチンの接種歴が大きく異なります。過去に1回しか接種していない、または接種歴が不明の場合は、抗体価の確認もしくはワクチン接種が勧められます。
また、風疹に対する予防接種は、妊娠可能年齢の女性のみならず、妊婦に感染させる可能性のある男性も推奨されています。
接種できない人
・麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)による強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)をおこしたことがある人
・妊娠していることが明らかな人
・免疫機能に異常のある疾患をお持ちの方、免疫抑制薬(ステロイドの経口投与など)を投与されている人
費用
商品名:ミールビック
費用(税込):1回8,800円(定期接種は無料)
定期接種
1期:1歳以上2歳未満に1回接種
2期:小学校就学前1年間(年長)に1回接種
このスケジュールで接種すると1回につき全額の助成が受けられます。
助成事業(任意接種)
板橋区ではワクチンの供給不足により定期接種を受けられなかった2~18歳の人を対象に救済措置を行っています。
1回1,000円の自己負担額で麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種を受けることができます。
よくわからない場合は、板橋区の「【任意】麻しん風しん混合(MR)ワクチンを受けられなかったお子さまへ」もご覧ください。
自治体によって助成事業が違う場合がありますので、板橋区以外にお住まいの方は自治体の助成内容をご確認ください。
投与方法
スケジュール
ワクチン0.5mLの皮下注射を合計2回行います。
1回目と2回目の間隔は28日以上あければ接種可能です。
大人の方で2回の定期接種を完遂していない人もワクチン接種を行った方がよいでしょう。
妊娠中の風疹感染を予防するためにも妊娠希望の女性についてもワクチン接種が推奨されますが、生ワクチンのため妊娠中には接種ができません。ワクチン接種後2か月は避妊が必要になるため、計画的な接種が必要です。ただし、接種2か月以内に妊娠が判明した場合でも、その胎児に健康問題が生じた報告はありません。
緊急接種
1歳未満の乳児が麻疹患者と接触した場合、72時間以内であればワクチンを接種することで麻疹の発症を防げる可能性があるため、緊急的に予防接種をすることがあります。
この場合、0歳での予防接種は免疫の獲得が不十分であるため、接種回数には含めません。1歳になってから通常通りのスケジュールで定期接種を受けてください。
他のワクチンとの接種間隔
注射による生ワクチン同士は27日以上の間隔を空ける必要があります。
不活化ワクチンや経口生ワクチンは接種間隔の制限はありません。
ワクチンについて
麻疹
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによる感染症です。飛沫・接触感染だけでなく空気感染もあり、感染力は最強クラスです(基本再生産数:麻疹 12~18、インフルエンザ 1~3)。潜伏期間は1〜2週間とされています。
典型的には、高熱、咳、目の充血、目ヤニ、発疹などを症状とします。最初の3〜4日間は38 ℃前後の発熱とかぜ症状、目の充血などで、一時おさまりかけたかと思うと、また39〜40℃の高熱と全身に発疹がでます。3〜4日で解熱し、発疹も消失しますが色素沈着がしばらく残ります。
麻疹は重症化しやすく、医療が発達した先進国であっても罹患した人の約1000人に1人は死亡するとされています。合併症として最も多いのが中耳炎で約7%で生じます。肺炎は1〜6%で合併し、乳児死亡の原因の大半を占めます。0.1%に脳炎を合併しますが、そのうちの約15%が死亡し、生存した約25%にも後遺症(麻痺、てんかん、難聴、精神発達遅滞など)が残ります。極めて稀ですが、亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)という長い潜伏期間の後に生じる進行性で予後の悪い脳炎もあります。
麻疹ウイルスに感染して発症すると、終生免疫(一生涯続く免疫)を獲得するとされています。
風疹
風疹は、風疹ウイルスの感染によって起こります。麻疹のように空気感染はおこしませんが、潜伏期間は2〜3週間と長く、症状のない不顕性感染や発症前からでもウイルスを排出するため季節性インフルエンザよりも高い感染力をもつとされています(基本再生産数:風疹 5~7、インフルエンザ 1~3)。
典型的な経過では、軽いかぜ症状で始まり、発熱・発疹・後頸部リンパ節腫脹などが出現します。しかし、15〜30%は不顕性感染で、典型的な症状でないものも多く、臨床症状だけで診断するのは困難です。麻疹のように重症化することは稀で、基本的には予後良好です。血小板減少性紫斑病や脳炎などの重篤な合併症は約0.02%にみられます。
最大の問題は、感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が感染したことで風疹ウイルス感染が胎児におよび、先天性風疹症候群を発症することです。妊娠初期の発生リスクは高く、妊娠1ヶ月では約50%以上、妊娠2ヶ月で約35%に生じるとされています。先天性風疹症候群では児に先天性心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄)、難聴、白内障、精神発達遅滞などの先天的な障害が生じます。
風疹ウイルスに感染して発症すると、終生免疫(一生涯続く免疫)を獲得するとされています。
ワクチンの効果
1回目の接種で麻疹、風疹ともに約95%の有効率を示し、持続期間は10年以上とされています。2回目の接種を受けることで有効率は100%近くまで上がり、ほぼ生涯にわたって免疫が維持されます。
風疹に対する予防接種で先天性風疹症候群をほぼ100%予防することができます。しかし妊娠中の女性は生ワクチンを接種することができないので、妊娠を希望する女性は風疹ウイルスの抗体価で十分な免疫があるか、予防接種を受ける必要があるかなど調べることが重要です。もし十分な免疫がない女性が妊娠した場合は、パートナーや家族が予防接種を受けて周囲が感染を防ぐ必要があります。なお、万が一、妊娠中にワクチンを接種してしまっても障害児の出生例は報告されていません。
血液検査で麻疹ウイルスと風疹ウイルスの抗体価を調べることで、現在の免疫力を調べることができます。大人の方(特に妊娠希望の女性)で予防接種を受けた方がいいかどうか知りたい場合はご検討ください。
非常に効果の高いワクチンですので多くの国で予防接種が義務づけられており、日本も定期接種を2回にしたことで麻疹の感染者数が減少し、2015年には世界保健機関(WHO)より国内麻しん排除状態と認定されるまでに至っています。しかし、世界全体では麻疹の感染者数は激増しており(2024年で約1,100万人と推定)、国外からの輸入感染による集団発生も未だに認められています。集団免疫のための目標値である95%以上の接種率を目指して、国民全員が2回の定期接種を行うことが推奨されています。
副反応
・局所症状(注射部位の痛み・腫れ・赤み):10%以上の頻度で出現しますが、2~3日で消失します。約3%でじんま疹を伴う局所のかゆみがでることもあります。
・発熱、発疹:弱毒生ワクチンですので、麻疹・風疹と同様の発熱、発疹が出現します。発熱は1期(1歳)で18〜20%、2期(年長)で約7%にみられ、約300人に1人で熱性けいれんを来します。発疹は接種後2〜3週間後に麻疹に似た皮疹が、1期(1歳)で約6%、2期(年長)で約2%にみられ、数日で消失します。
第2期(小学校入学前の1年間):約1.7%数%で認められます。
ごくまれに起こる重い副反応としては以下のものがあります。いずれも数十万~100万接種に数例の頻度で報告されており、心配する必要がないほど極めて稀といえます。
・アナフィラキシー:ワクチンに含まれる成分に対して体内の免疫システムが過剰に反応することで起こる重篤なアレルギー反応です。蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難、腹痛・嘔吐などが出現します。
・血小板減少性紫斑病:体内の免疫システムが血小板を誤って攻撃してしまうことで起こる合併症です。出血しやすくなることで内出血(青あざ)や粘膜出血(鼻血、歯肉出血)、血尿などが出現します。
・脳炎:体内の免疫システムが脳などの中枢神経を誤って攻撃してしまうことで起こる合併症です。発熱、頭痛、意識障害、痙攣などが出現します。
