高齢者肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による感染症を防ぐための不活化ワクチンです。肺炎球菌は気管支炎・中耳炎・副鼻腔炎などの主な原因菌の一つですが、侵襲性に肺炎や髄膜炎に移行して重症化することがあります。さらに近年、耐性菌も増加傾向であり、ワクチンでの予防が推奨されています。2026年4月から高齢者の「定期接種」の仕組みが大きく変わりました。
対象者
肺炎球菌ワクチンは生後2ヶ月以上で接種することができます。
重症化リスクの高い人(乳幼児、高齢者、心臓や肺に持病のある方など)はワクチンの接種が推奨されます。
接種できない人
・明らかに発熱のある人(37.5℃以上が目安)
・急性疾患に罹患している人
・過去に肺炎球菌ワクチンを接種して強いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)をおこしたことがある人
費用
商品名:プレベナー20
費用(税込):1回11,000円(定期接種の対象者は4,000円もしくは5,500円)
定期接種
定期接種の対象者は子供と高齢者で分けられています。当院では高齢者の定期接種を行っています。
<小児の定期接種>
2ヶ月以上の乳児に対して合計4回行われ、1回につき全額の助成が受けられます。
当院では小児の肺炎球菌ワクチンの定期接種は行っていませんのでご注意ください。
<高齢者の定期接種>
・65歳の方
・60歳以上65歳未満の方で、心臓・腎臓・呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障がいを有する者(身体障害者手帳1級程度)。
上記の方で、これまでに肺炎球菌ワクチンの接種を受けたことがない場合、自己負担額が5,500円となるよう助成が受けられます。なお、令和7年度中に「自己負担額4,000円」と印字された予診票をお持ちの方は、自己負担額4,000円のままですのでご安心ください。
生活保護受給者や中国在留邦人等支援給付受給対象者は無料となります。
投与方法
スケジュール
ワクチン0.5mLの筋肉内注射を1回行います。
他のワクチンとの接種間隔
肺炎球菌ワクチンは不活化ワクチンですので他のワクチンとの接種間隔の制限はありません。
ただし他のワクチンを同時に接種すると、副反応が出たときにどちらのワクチンによるものか判断しにくくなることがあります。
ワクチンについて
肺炎球菌
肺炎球菌は、飛沫感染や接触感染で伝播しますが、健康な状態でも鼻や喉の奥に存在(保菌)していることが多く、その保菌率は小児で30%〜50%以上、成人で数%〜10%程度とされています。そのため、肺炎球菌の潜伏期間や感染力は正確な数値として定まっていません。
加齢や持病などで免疫力が落ちると保菌状態から、気管支炎・副鼻腔炎・中耳炎などの上気道を中心とした呼吸器感染症を発症します。そのうちの一部が下気道まで波及して肺炎となります。肺炎球菌は肺炎の原因として最も多く、市中肺炎の約20~30%、医療・介護関連肺炎の15~20%を占めるとされています。
肺炎球菌が血液の中に入り込むと、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)と呼ばれる極めて危険な状態になり、敗血症や髄膜炎を合併して致死的な経過をたどります(死亡率は成人で15〜20%、高齢者で30〜40%)。現在、定期接種で使用されているワクチン(プレベナー20)は侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)に対する予防効果が高いとされています。
肺炎球菌は保菌状態でヒトの身体に長期間存在するため、抗生剤やワクチンが効きにくくなることが問題となっています。市中で見つかる菌の8割以上がマクロライド系抗生物質に、3~4割がペニシリン系抗生物質に耐性をもっているとされ、多剤耐性肺炎球菌(MDRSP)が増加しています。耐性菌の出現を抑えるためにはワクチンによる予防接種が重要ですが、予防接種が普及した日本ではワクチンがカバーしていないタイプ(非ワクチン型)の肺炎球菌が台頭してきており、ワクチンのアップデートが必要となりました。そのため、2026年4月から(小児では2024年10月から)定期接種で使われるワクチンが新しくなりました。肺炎球菌には100種類以上のタイプ(血清型)があり、予防接種を行ってもワクチンがカバーしていないタイプ(非ワクチン型)の肺炎球菌によって肺炎を発症するリスクは残ります。肺炎球菌対策における「いたちごっこ」ともいえる課題が残りますが、このワクチンは現在流行しているタチの悪い20種類の肺炎球菌による重症化を防ぐ手段として位置づけられています。
ワクチンの効果
プレベナー20は、20種類の血清型の肺炎球菌による感染症の重症化を予防します。臨床で使いはじめられてから日が浅いため正確な有効率は確定していませんが、先行して使用されていた同系統のワクチン(プレベナー13など)のデータから、カバーしている血清型の肺炎球菌による肺炎を約30%、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)を約90%防ぐことができると推定されています。
従来のワクチンとは違って、プレベナー20は実際の感染に近い免疫反応を引き起こすことで免疫記憶を形成し、1回の接種でほぼ生涯にわたる長期の免疫維持が期待できます。従来のワクチンは、標的とする血清型の肺炎球菌の莢膜成分の糖鎖が含まれており(多糖体ワクチン)、それに反応したB細胞が形質細胞に分化して免疫を形成します。分化した形質細胞は数週間で消滅しますが、一部はリンパ節や脾臓などのリンパ組織に移動し、比較的安定した環境で数年間生き残ります。そのため、5年間くらいの免疫維持しか期待できませんでした。しかし、プレベナー20などの結合型ワクチンは、標的とする血清型の肺炎球菌のタンパク質(ペプチド)をワクチンの糖鎖に結合させることで、B細胞を形質細胞へ分化させるだけでなく、ヘルパーT細胞へ抗原提示できるようになりました。活性化したヘルパーT細胞はサイトカインというシグナルを発して様々な免疫細胞を刺激するので、よりリアルな免疫反応が引き起こされます。その過程で肺炎球菌の情報を有した記憶細胞やとても寿命の長い形質細胞が作られ、生涯にわたって免疫が維持されます。
副反応
上述の通り、実際の感染に近い免疫反応を引き起こしますので一般的な副反応は比較的多く出現します。
・頻度30~60%:局所症状(注射部位の痛み・腫れ・赤み)、筋肉痛、全身倦怠感
・頻度10%以上:頭痛、関節痛
ごくまれに起こる重い副反応としては以下のものがあります。いずれも心配する必要がないほど極めて稀とされています。
・アナフィラキシー:ワクチンに含まれる成分に対して体内の免疫システムが過剰に反応することで起こる重篤なアレルギー反応です。蕁麻疹、血圧低下、呼吸困難、腹痛・嘔吐などが出現します。
・血小板減少性紫斑病:体内の免疫システムが血小板を誤って攻撃してしまうことで起こる合併症です。出血しやすくなることで内出血(青あざ)や粘膜出血(鼻血、歯肉出血)、血尿などが出現します。
